ルポタージュ「KAIGAI」
私が海外で体験した海外四方山話集です

 
召集令状(大韓民国) 2004/10/03
 オーストラリアはゴールドコーストに留学中。ジンという仲間がいた。彼は19歳の韓 国人。家が裕福らしくて、兄妹で留学していた。因みに、私は13年間勤めた金融機 関の退職金で留学を果たした。親のすねをかじっての海外生活が羨ましかったが、 よく考えてみれば、オレみたいな一般人でも海外で生活できる日本人に生まれてラ ッキーだったかな? まあ、扶養をする人間が居ないことが条件になるが。
 ご存じの通り、韓国の成年男子には約2年間の兵役義務がある。その間の給金 は非常に微々たるモノで、文字通りお国を守るための勤労奉仕であるという。様々 な韓国人の友人が出来たが、彼らの話を総合すれば、軍隊に行きたいと考える輩 はほぼ0%だという。
 ジンもそんなひとり。
 「遠い海外で生活していれば、ひょっとしたら兵役が免れるかもしれない」
そんな気持ちでオーストラリアにやって来た。
 学校でのジンは面白かった。はしゃいで机の上から飛び上がり、思い切り天井に 頭をぶつけて、私がかつて見たこともない大きなコブを作っていた。
 そんな平和な日々も僅か3ヶ月ばかりだった。ジンの元に韓国領事館から出頭命 令が届いた。不安な気持ちで出頭し、一枚の紙切れを受け取る。
 「軍に入隊するために、帰国せよ」
と、いう書面だった。
 その場で頭を抱え、固まってしまったジン。何が嫌なのかと問えば、先輩の軍人に いびられるが嫌だという。
 韓国ドラマで人気の俳優が、徴兵逃れを指摘された事件で、ジンのことを思い出し た。あれから、かれこれ5年が経つ。もうとっくに兵役は勤め上げただろうな。今頃、 どこで、何をしているのだろう。
 




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