ルポタージュ「KAIGAI」
私が海外で体験した海外四方山話集です
車内で物売り・ソウルの地下鉄(ソウル・大韓民国)−その2− 2003/02/22
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私がソウルを訪れたのはひとり旅ではなく、職員旅行でだった。地上では交通渋滞
が激しく、もっぱら地下鉄による移動が多かった。我がグループが空いた席に腰掛
けていると、突然車両中央付近で中年男の演説が始まった。我々一行に韓国語の
理解できる人は誰もいない。ただ、韓国語の特徴で何やら怒っているような口調に
聞こえる。「やばいな」と直感的に感じた。我がメンバーたちも不安の表情を隠せな
い様子。が、辺りの現地の乗客たちはいっこうに動じない。大声でわめき立てる声
の主に恐る恐る視線を移してみると、鞄から何やら歯磨き粉や石鹸・洗剤などの日
用雑貨を取り出し、周辺に見せつけている。その品物を手に取って、声の主にお金
を渡す婦人。ここまできて彼が物売りであることに気づいてひと安心した。▲この話
を友人の韓国人にしたところ、本来はこの手の商売は法律で禁止されているとのこ
と。それにしても冒頭の演説の内容が知りたかったので、一般的な例を教えてもらっ
た。要約すると以下の通りである。「私はこの度不景気のあおりを受け、20数年間
勤めた会社(或いは経営していた会社)の倒産という厳しい現実に直面しました。こ
のままでは一家心中の道しか残っておりません。最後の最後に我が愛する家族に
何かお礼をしてやりたいのです。どうかこれらの商品で私どもをお助下さい」。このよ
うな「語り」のほとんどが嘘八百で詐欺行為ということだった。▲何度か地下鉄に乗
車し、似たような体験を繰り返すうちにこんな風景にも慣れてしまった。最後にはお
ばちゃんの物売りからガムを購入した。
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